自由と責任と感謝祭

2020年11月29日

世界一の...


アメリカ中西部に位置する

サウスダコタ州は

10万人あたりのコロナウィルス 死亡者数が

今や世界1です。

トップを分け合っているのは

お隣のノースダコタ州。

北海道の2倍の広さの土地に

約90万人が住む農業が中心の州です。

人口密度 4.5人/km2 は

アメリカで5番目に低い州です。

北海道は66人//km2 なので

一体どんな場所なのか、

どんな場所でウィルスの感染が広がっているのか、

想像してみてください...。


同州はネイティブアメリカンのダコタ族が

人口の1割ほど住んでおり、

米国の中でも最も貧しい地域が

点在する州でもあります。


水道、電気、電話もなく、


農業にも適さない土地に追いやられた人々がいます。



マウントラシュモア国立モニュメントは

ネイティブアメリカンが崇拝する神聖な土地、

ブラックヒルズを削って

観光地にする目的で作られたものです。

四人の大統領の巨大な胸像は

サウスダコタの南西部に位置します。


ネイティブアメリカンにとっての

マウントラシュモアは

裏切りと白人至上主義による

抑圧の象徴とも言えます。

◆マウントラシュモア

◆the population density in the U.S. per square miles

◆日本の人口密度ランキング

◆両ダコタ州の感染状況https://www.ft.com/content/82311cae-7775-4359-9c47-c13ea1e4bee7

◆サウスダコタ、ノースダコタの感染関連ニュース映像https://www.cbsnews.com/video/the-dakotas-lead-the-world-in-covid-19-deaths-per-capita/#x

◆ジョンズホプキンス大学が出している人種別のコロナウィルス 感染関連データ

https://coronavirus.jhu.edu/region/us/south-dakota



州知事はかく言う


サウスダコタ州の知事はKristi Noem 。

2019年1月に就任しました。


35歳から州議会議員として、


その後は国会の下院議員としての経験もある


ベテランの共和党員です。


彼女に関するニュースはYoutubeでも

多く見ることができますが、

スピーチの最初から最後まで、

そして記者からの質問への回答も

併せて見ることができる

こちらの動画を取り上げてみました。

現在の感染状況を鑑みながら

知事がどんな政策を持っていて、

どんなことを州民に伝えているか、

政治を抜きに追っていきたいと思います。


スピーチの中の7'00" から 8'54 を抜粋しています。


 

This virus posed many challenges for us.  The situation has been historic in the absolute worst way.  But with every challenge comes an opportunity to learn to adapt and to improve.  So let's take a couple of minutes to walk through some of the lessons that we have learned.  And perhaps one of the most significant one of those lessons that we've learned that is more freedom and not more government is the answer.


このウィルスで私たちは試練に立たせれています。史上最悪の状態が引き起こされています。しかし、課題があるからこそ私たちは適応し、進化するための学びの機会を与えられているのです。これまでの間に我々がどんなことを学んできたか、少し考えてみましょう。最も大事なことは政府の介入が答えでなく、重要なのは「自由」ということです。


Now while freedom isn't necessarily the one thing that will solve all of our problems but it will certainly take us down the road much further towards where we want to go.
Freedom is a much better friend to true science than government-centered or government-controlled science.  Freedom not government is the best friend of innovation. Freedom focuses on politics of persuasion and intellectual strength of all of our positions, not on control coercion and the heavy hand of government. And if someone is interested in the common good in all of its iterations and complexities, freedom is the one and only choice available to us.


「自由」が全ての問題を解決する必要はありませんが、でも私たちを進みたい方向へと導いてくれることでしょう。政治主導や政治に支配された科学よりも、「自由」の方が真の科学の友となり得ます。支配ではなく、「自由」こそが革新の友です。私たちの寄る辺となる政治的信念や理知の強さを中心と見なすのが「自由」です。強制的なコントロールや政府の強権ではないのです。もし社会の利益の反復や、そのこみいった難題に関心があるのなら、「自由」こそが私たちが手にできる唯一の選択肢です。

Now my approach to this virus was to provide South Dakotans with all of the information that I had available to me and then allow them to exercise their freedom to make the best decisions for themselves and for their families.

We took a unique path. We did not lock people up, we did not close any businesses in the state of South Dakota not once did we issue a shelter in place I didn't even define what an essential business was because I don't believe that I have the authority to tell you your business is an essential.


このウィルスに対しての私のアプローチは、サウスダコタの人々に私が手に入る情報全てを共有して、皆さんが「自由」を行使し、自らや家族にとってベストの選択をするよう任せることです。

私たちは独自の路線を進みました。私たちは人々を閉じ込めることはしなかったし、どんなビジネスも閉じませんでした。一度としてステイホーム命令を出しませんでしたし、何が必要不可欠なビジネスかを定義することもしませんでした。なぜなら私にはどの業種が不可欠かを決める権限はないと信じているからです。

個人の自由の追求


サウスダコタ州知事のメッセージは

一貫して「自由」の追求です。

建国の歴史をなぞらえば、


「自由」の概念、追求抜きには

アメリカを語ることはできません。

日本人にとって個人の自由は

優先度が低い価値観ですが、

歴史、文化、人種、国土、環境等

違いを考慮に入れつつ

知事や多くのアメリカ人が見なす「自由」を

理解しよう、と私自身は努める必要があると

思います。


8ヶ月間の自宅生活からやっと離れて、

今週の感謝祭週間に

家族でキャンプに出かけてリフレッシュしてきました。

とにかく広い。

見渡す限り何にもない。

都市や郊外を一旦離れると

そんな光景が延々と続きます。

それがアメリカです。


英国の植民地時代を経て

独立して自由を勝ち取り、

広大な土地で自分の生活と命を守るために

個人が銃を手にしてきたのがアメリカです。


対照的に

日本では自分勝手に振る舞えば攻撃され、

不可抗力な事態でも

責任を突きつけられて

ウィルスに感染したら謝罪する国です。

むしろ自由は抑圧され、

調和と責任が上に立つ国から私はやってきました。


ですからコロナ禍の今、

何よりも個人の権利としての自由が叫ばれ、

政府によって自由が脅かされているとの認識と

私の世界観は

重なり合うところを見出すのがとても難しいです。


ただ、

誰もが一人では生きていけない世界で、

個人の「自由」を第一に主張する時、

多くの命や自然の犠牲のもとに獲得されてきた

本来の自由の意味が貶められていると

危惧します。


世界的な新型ウィルスの蔓延で

人々の生活や命が脅かされている今は

人間が存在する意味、

生命の意味を見つめ直す時だ、と

思わずにはいられません。

それは個人や国家的なイデオロギーを突き抜けた

もっと壮大な何かです。

生きる意味


そんな風につらつらと考えている時に

偶然にも読んでいたのが

「Man's Search for Meaning」 でした。

邦訳は「夜と霧」ビクトール フランクル著です。

世界中の人々が手にしてきた名著ですので

すでに読まれている先生方も多いかと思います。

まるで私に回答を示してくれるようなタイミングで

この下りが目に飛び込んできました。


"Man is not fully conditioned and determined but rather determines himself whether he gives in to conditions or stands up to them. In other words, man is ultimately self-determining. Man does not simply exist but always decides what his existence will be, what he will become in the next moment.



By the same token, every human being has the freedom to change at any instant. Therefore, we can predict his future only within the large framework of a statistical survey referring to a whole group; the individual personality, however, remains essentially unpredictable. The basis for any predictions would be represented by biological, psychological or sociological conditions. Yet one of the main features of human existence is the capacity to rise above such conditions, to grow beyond them.


Man is capable of changing the world for the better if possible, and of changing himself for the better if necessary."

(要約)

人間というものは自由意志がある。極限状態に対峙した時、諦めることもできるし、抗い立ち向かうこともできる。
だから人間はどんな状況でもいつでも変わることができる。どんなに過酷な状況も乗り越えて成長することができるのが人間で、だから世界や自分自身を良い方向に変えることもできるのだ。


フランクル博士はアウシュビッツを

37分の1の確率で生き延びた

神経学者であり、精神学者です。

極限の状態で自分自身や他の収容者の精神状態を

具に見てきました。

生きるためにはkapoになって

ナチスの番人よりも同胞を痛めつけるユダヤ人。

諦めてまるで動物へと成り下がる者もいれば

死の直前まで人間としての尊厳を失わない人がいる。

だからこそ博士は

「どんな状況にあっても人間は生き方を選べる、

自由だ」と主張しているのです。


その後こう続きます。


Freedom, however, is not the last word.   Freedom is only part of the story and half of the truth.
Freedom is but the negative aspect of the whole phenomenon whose positive aspect is responsibleness.  In fact, freedom is in danger of degenerating into mere arbitrariness unless it is lived in terms of responsibleness.


しかしながら自由が全てではない。自由は真実の半分しか語ることができない。

自由というのは人間の陰の側面でしかなく、その陽の側面は責任であるからだ。事実、自由というものは責任を持って実践されなければ、ただの独断や身勝手へと退化する危機に瀕している。 


この下りの少し前に、

Dr.Jという人物の話が出てきます。

Dr.Jは収容所の精神病棟で、


その残虐さで恐れられた人物です。


フランクル自身は、

Dr. Jも他のナチス党員と同様に

南米へ逃げて身を隠したのだろうと

推測していたのですが、

オーストリア大使館の知り合いから

思いがけない話を聞きます。

Dr.Jは彼と共にロシアの強制収容所に

収容されていた、というのです。


過酷な収容所生活の中で


人間性を取り戻したDr. Jは


癌でなくなるまでの間、

周りの人に対して真摯に向き合った。


大使館員にとってはこれまで出会った中で


最高の仲間だった、というのです。


かつては人々を震え上がらせたDr. Jは

自分が置かれる境遇が

以前と180度逆になった時、

生き物に成り下がらず、

生きる意味を探しながら

一人の人間として責任のある行動をとった。

そして最後には精神の自由を獲得して命を終えたと

フランクル博士は捉えたのだと思います。

自由の女神と責任の女神


そしてこう続きます。

That is why I recommend that the Statue of Liberty on the East Coast be supplemented by a Statue of Responsibility on the West Coast.


だから僕は東岸の『自由の女神』は 西岸に『責任の女神』を作ることで補われるといい、と勧めているのです。


私はこれをアメリカ、そして人類への戒めと

取りました。


責任の女神は

民主主義が名目に成り下がったアメリカへの

強烈なメッセージと思います。

私が子どもや生徒たちと

「自由と責任」

Liberty/Freedom and Responsibilityという

対の概念について

話すチャンスがあれば、

二つの女神の話は

とてもわかりやすい例だな、と

思ったのでシェアさせていただきました。


さらに、それを忠告したのが他でもない

フランツ博士であることに

大きな意味があると感じます。

Thanksgiving 2.0


サンクスギビング週間が終わります。

学校での「サンクスギビング」の取り上げ方も

従来とは少しずつ変わってきていると

耳にしています。

◆サンクスギビングを社会的責任を持って教えるにはhttps://www.tolerance.org/magazine/teaching-thanksgiving-in-a-socially-responsible-way

◆ネイティブアメリカンの視点で学習するサンクスギビングhttps://www.nationalgeographic.org/activity/recognizing-native-american-perspectives-thanksgiving-and-national-day-mourning/

◆ネイティブアメリカンによるサンクスギビングの祝い方 (有害な嘘をつくのはもうやめよう。代わりに自然がもたらす食べ物の恵に共に感謝しよう)https://time.com/5457183/thanksgiving-native-american-holiday/


現在のネイティブアメリカンの人々の

置かれている状況を

「自由と責任」のフレームワークで

考えずにはいられない、

そう思った2020年11月でした。



本日もお付き合いいただきまして

誠にありがとうございました。

スナダマリコ 拝


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神奈川県の逗子で英語教室を6年主宰。転勤で2019年4月からテキサスのヒューストンに住むことになり、現在は逗子の生徒とオンラインレッスンでつながっています。2020年6月より指導者達とつながるネットワーク「つながるまなび educators' studio」通称「まな部」を主宰。ランダムなブログ配信と月一回のイベントや勉強会を行なっています。